紅蓮の炎
当時総長 side
来てみると、向こうからは1人しか来ていなかった。
嘗められたもんだな…
向こうは1人、
こっちは連合に加入しているチームの総長、副総長が居るため容易く20人近くは居た。
俺の前に来た南の人物は端整な顔の造りをしていることも合間って、自分より断然若くみえる。
せいぜい、高1くらいの容姿…
うちの響達と同い年か…?
「龍神連合の総長をしている。
ーーーーー」
そう思いながらも自己紹介をし、総長と思われるその男に視線を縫いつける。
本当に、やけに整った顔立ちだ。
年に似合わず、何処か飄々とした雰囲気と、猫目がちな切れ長の目からは抜け目の無ささえも伺えた。
ぱっと見は外で活発に走り回り、
“頭よりも体が先に動く”
といった性格をしていそうなのに…。
会って早々、敵に回したく無いな。と
純粋に思った。
そう感じさせた当の本人は、
俺達の自己紹介をきき、へらりと笑う。
「あ〜、俺、戸矢大悟ちゅーねん
一応パンサーの総長やっとります〜
んー、まぁよろしゅう頼むわ〜」
また、独特な話口調の奴だ。
ここらではまずまず聴かないその話し方に少なからずも驚いた為反応が遅れてしまった。
「あぁ、こちらこそ」
家族に関西の人でも居るのだろうか…。
頭にそんな疑問が過ったが、それは関係ないだろう。
直ぐに消えていった。
でも、ワンテンポ遅れで
確かに戸矢にはこの話し方が合っているな。
と納得する
飄々と、抜け目の無い雰囲気は全てこの話し方で余計に引き立てられ、惑わされる気分になる。
そして納得させられる。
「さっそくで悪いんだが、」
そう言って切り出した話題。
この連合に入って一緒に北に立ち向かってくれ
その内容の話しをした。
ただただ仲間を集めなくてはいけない。
北を倒す為には戦力が必要だ
中央は元より龍神を軸にその傘下…
東は黒豹。
西は西独を始めとするたくさんの族…
どれも北により被害が出ていた為、少しの話し合いで連合に加入すると協力してくれた。
先に協力してくれやすいチームから…。
北…、バジリスクを倒す為に県外にも連合勧誘の手を伸ばした
最後に、
北からの被害が無く、立ち入ったことが無い為よく分からないがあまりいい印象は無い…
そやでもこの街を纏めるためには必要な南町を…。
勿論、フラれる覚悟はしていた。
というより、フラれることしか考えられなかった。
正直、龍神連合に入ることによってのパンサーの利益が見つからないのだ。
寧ろ、長年の偏見から来る不利益ばかり。
だから彼の…
戸矢大悟の返事には正直びっくりした。
「つまりは俺らパンサーに連合へ入れと」
「そう言うことになる」
あえて一泊間をあけたのが分かった。
「かまへんで?別に」
「…いいのか?」
拍子抜けした。
ほんの少しでも攻防があるのかと思ったのに…
仲間が増え、喜びの声が後ろからきこえる。
「ただし、条件がある」
歓喜の声が聴こえながらも、戸矢は条件を出してきた。
「条件…?」
「せや」
俺の問いに頷き話し始める戸矢。
「前まで、南に西からしょっちゅう族来とったんやわぁ〜」
「…何が言いたい?」
一緒でピリッとした空気。
訝しむ俺の顔をニヘラっと笑いながら見てくる
「えーっとな、」
目があった。
体が動かないくらい、その感情の読み取れない目に囚われる。
「パンサーは連合に入った言うても南の方が大切やさかい、
もし南になんか仕出かすんやったらまぁ、
敵やな」
ゾッとした。
敵と言った時の彼の瞳が一瞬、獣のようにみえた。
「例えばやで?
王道狙ろてあんたらに姫が居たとするわ」
「…あぁ」
「姫は何があっても守らなあかんゆーけど」
話しながら道の脇に置いてある青い大きなゴミ箱を持ってくる。
「俺らは姫と南、
天秤にかけられたら…」
よいしょ
そう言ってそのゴミ箱の上に座り、俺達を見据え、ニコニコと笑いながらとどめを刺すかのように無慈悲にこう言った。
「迷わず南選ぶわ」
高1だと侮っていたことに後悔する。
総長だと納得させられる、その年に合わない有無を言わさない威圧感を出してきた
身の竦むような威圧感を…。
「むろん、これは自分らの意思やで?」
ヘラっと笑ったその顔。
その顔すらも今では少し怖かった。
「…分かった
その条件…意思を呑もう。」
「総長…っ」
誰もが後ろで息をのむ。
手放しで喜べないこの現状。
でも今は気にしてられない
「今はとにかく同志が欲しい。
だからそれを呑む」
「そーか、ありがとさん。
あともう一つ、」
まだ何かあるのか?
そう目で訴える
「次は大丈夫やで
さっきみたいな面倒なことちゃうさかい」
俺の顔をみて両手を顔の高さまであげながらけたけたと笑う。
「…なんだ?」
声に出してきく。
俺は疲れたぞ…
主に精神的に。
なのに戸矢はこれだけの人数を前にしてもなおヘラヘラ笑う。
「あと一つはなぁ〜」
右足をゴミ箱の上にあげ、両腕で抱きしめるのうにして、その膝に顎を置く。
自然と上目遣いになった目はまさに可愛らしくお願いをしてくるかのようだ。
「北が南に入った時は、手ぇ出さんといて欲しいねん」
内容はこれっぽっちも可愛くはないが。