紅蓮の炎
『…は?』
場に居た者のから、思わず声に出してしまった者や、心の中で思った者。
様々たが、皆そう思っただろう。
実際俺は思った
「どういう…」
ことだ?
そう続く筈だった言葉は思わず飲み込んでしまった。
戸矢がここに来て、初めて困ったような笑みを浮かべたから…
きっとこれは素の表情なのだろう
なぜか、そう思えた。
「こればっかりは条件ちゅうより警告や思といてくれた方がええわ」
「それって…」
俺の後ろで誰かが呟く
振り返ると、西の奴等だった。
「どうかしたのか?」
別のチームの奴が西にきく
「西が南に攻めてたのは知ってるだろ?」
そう言って始まった話しは、西独の総長が代表して話した。
少し前、まだ西町全域の族が龍神連合に加入する前、西町と南町は戦争状態にあった。
結果としては南が圧倒的な勝利を納めたが。
「その時はそれぞれのチームでやり合ってたんだけど、全く勝てない事にこっちも苛立ちとか焦りが来てさ…
西全チーム組んで南に乗り込んだ」
西だって大きい町だ。
その町で、頻繁に縄張り争いをしている奴等だ。
少なからず喧嘩慣れしている。
そして、そのチーム自体の数もそこに所属する人数も、少ないわけがない。
「けど、」
戸矢に視線を向けた彼はしっかりとした目をして疑問を問いかけた。
「なんでパンサーは出て来なかったんだ?」
その疑問を投げかけられた戸矢は今度は苦笑いを浮かべる。
「それやで西の方」
ここに居る全ての人の視線が戸矢に向く。
「南の安全は皆“紅蓮”が守ってんさかいなぁ〜」
『紅蓮』
久々にきいたその名前。
初代の頃より恐れられ、
『南にだけは喧嘩売るな』
と言わせた女だけのチーム。
紅蓮が戦場に降り立つとそこは一気に彼女達の一方的殺戮が始まる
龍神は過去に壊滅寸前まで持っていかれたらしい。
だから岩島さんが警察という立場を抜きにしてもあそこまで南に近づきたがらないのだ。
これは今では龍神連合上層部しか知らない事実になってしまった。
だれも語ろうとしなかったから、一般的にはあまり知られていない。
リベンジしようとは到底思えない強さだった。
そう言われ続けている。
「紅蓮は絶対他のチームと混ざろうとしいひんさかい、俺らかって戦闘の邪魔したら容赦無く潰されるわ」
ま、言うても南には紅蓮とパンサーしかチームなんてあらへんねんけどな
「南の中でおきた事は全部紅蓮が対処するさかい、俺らはぶっちゃけお飾りやねん」
そう言って膝に頬をつけた。
「せやかて紅蓮も人間やし、ましてや女の子や」
伏せていた瞼をあげ、同時に俺達の方へ顔を向ける。
「西とのそれがあって気づかされたんよ。
中で今まで守ってくれてんから、外で護らなって」
戸矢から視線が動かせない。
「パンサーの方がずっと昔からあったんよ。
でも俺らがだらしないさかいなぁ〜
女の子の手煩わしてしもたさかい、今じゃカカア天下やで」
怖いでほんま
「あいつらにだけは、まともにやりあったら敵わんわ〜」
少し、優しく笑う。
その空気に程良く浸った。
「ってな感じの事がうちからの条件や。
どーや?」
笑いながら肩を竦める戸矢
「決まってる。
その条件も呑もう。だから、
龍神連合に入ってくれ」
戸矢の目をしっかり見て言う。
戸矢は、ニィっと口角を上げ、
「ラジャ、総長さん」
と言った。
そのニヒルな笑みは酷く様になっていて、こちらを動かしにくい最強の手札を持った気分にさせた。
「ほなうちのチームの紹介だけでもせなあかんなぁ〜」
そう言って、かたりと体を揺らした。
「んでも、顔見せだけになるやろけどーーーーー」
ーーーーー辺りにある暗い建物から突然人が現れだした
それは1人、2人の数じゃない。
何十人と居る
そんな数が一気に飛び出してきて…、
ゆっくりとこちらに近づいてくる。
酷く悠然としたその動きにこちらは固まってしまう
こんなに沢山の人数が潜んでいたなんて
思いもしない。
こんなに沢山の人数、
俺達が気づかないなんて…っ
グルグルと頭の中で何かが回っている。
冷や汗が頬を伝いそうだった
「総勢70名」
声も出せない、呼吸もままならない。
そんな俺達の顔を見ながらクィっと唇の端を持ち上げた戸矢の両サイドに人がメンバーが並んだ
「パンサーや」