紅蓮の炎








正鈴高校はトップクラスの進学校だから授業に出ないと置いていかれるし、単位もなくなる。
それに出席日数が足りなければ進級も出来ないし、ましてや卒業もできない。

だがそれさえ守ればあとは本当に緩い学校だ。


気は進まないが教室へ行かなくてはいけない。
じゃないと遅刻扱いだ。

瑠衣と克也は2年生だから途中で分かれ、今は俺と雄と美鈴と要だけだ。
談笑しながらも教室に近づく道すがら、パンサーの面子2人と出会った。
和也と俊司だ。
見たところほん今し方登校してきたようだ。


「おー、響と雄じゃん」

「はよー」


タラタラと廊下を駄弁りながら歩いていた2人は俺達に気づいて声をかけてきた。


「いいのか?こんな時間に登校で」

「だいじょーぶだいじょーぶ!
鬼瓦には会わなかったし。な!」

「そーそー
俺ら運いいんじゃね?」

「絶対今日の牡牛座1位だったんだよ」

「馬鹿言え。今日は水瓶座が1位に決まってる。」

「はぁ?んなわけねぇーじゃん」


恒例として始まった漫才のようなやり取りききながら一緒に教室の方へ歩き出す。
やはり彼らは美鈴と要に「おはよう」と言っただけで特になんの反応もなかった。

因みに鬼瓦とは正鈴高校にいるとても恐い先生だ。
生徒指導の教員でよくパンサーに手を焼いている姿を目撃する。


「そう言えば2人は何組なんですか?」


雄が思いついたかのように声をかける。
すると漫才はとまった


「俺は3組だったっけな…」

「俺1組ー。お前ら何処よ?」

「僕は2組かな」

「俺は3組だった。」

「へー、じゃあ俺響と同じじゃん
よろしくー」

「あぁ」

「雄、俺達は同じじゃねぇけどよろしくな…っ」

「なに泣きかかってんだよ」

「はい、よろしく」


雄はクスクス笑いながら返事をしていた。
美鈴と要は6組らしく、途中で分かれた。


「じゃあまた後でね、響、雄」


また2人で議論を始めた和也と俊司は少し先に進んでいて、遠くにいた。


「えぇ、また。」


返事をした雄の隣で頷く。
教室に2人が入ったのを見届けて前の2人に早歩きで追いつく。


「ラッシーの方がかっこいいじゃねぇか!」

「俺の基準はかっこいいだけじゃ留まらねぇんだ‼︎パトラッシュを舐めんなよ!」


俺達が居ない間に一体何があったのか。
後ろで雄と一緒に顔を引きつらせていると、もう教室に着いたみたいだ。


「和子に私の気持ちなんて分からないわ!絶交よ‼︎」

「言っときなさいよ!俊ちゃん後から絶対後悔するから‼︎」


ふん!と、可愛らしく顔を背け、和也は俺の腕を組み

「行きましょ、響くん」

と、思いっきり俊司を睨みつける。
対して俊司も雄の腕を組み

「雄くん行こ!」

とメンチ切って背を向けてしまった。
グイっと腕を引かれ、俺も教室のドアへ向かう。
振り返り雄をみると、苦笑いしながらも何処か楽しげにみえる雄がいた。








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