紅蓮の炎
ふと気づけばもう中央町まできていた。
怒りは紅蓮を包み込み膨張した。
今はまだ膨張段階でその勢いは凄まじく、中央町の大通りを『流れる』なんて甘いニュアンスの言葉じゃ表現できない速さで周りの建物が通り過ぎていく。
おかげで周りに何が見えるかなんてさっぱりわからない。
せいぜい分かるのは自分の周りで仲間が同じスピードで疾走している光景ぐらいだ。
顎を引いてチラッと後ろをみると、
皆が地獄業火を纏う紅蓮の炎で…
第三者からみるときっとかっこ良く映っているだろう…。
身内からすると敵に回したら命がいくつあっても足りない恐怖の塊にしかみえない。
「ひーちゃーん‼︎‼︎!」
優芽の声が聞こえそっちを振り返ると、優芽は前を向いていた。
同じように見やる
なるほど。
「北に…突入」
小さく呟くと同時にそびえ立つ灰色のビルが両サイドに威圧するかのように建ち並んでくる。
美琴の話しだともうすぐで…
少しづつ減速していると皆も同じように減速し始めていく。
ほんの数十秒そうして走っていると
「あそこかな…」
開けた場所が見え始める。
より一層減速させ目的の場所に着く。
そこは大きなビルが無惨に倒壊していた。
「うっわ〜、むちゃくちゃじゃん」
「危なそ…」
鋭く尖った剥き出しの錆びた鉄筋コンクリートがごろごろとそこらに散らばっていて、所々ドス黒いものが付着している。
言わずもがな
「…血?」
「血だね」
「量がおかしい」
南町の町医者の娘のツクモが眉を顰めながら言った。
確かにあの量はおかしい。死んでもおかしくない量だ。
「…ま、あたしらも気をつけよ」
そう言って締めくくったとき、やっとビルの間間からおびただしい量の人が出てきた
「おーおー、お待ちかねの方々が来たじゃん」
「うっわー凄い量」
「しかも初っぱなからなんか持ってるよ」
あたし達を囲むように下卑な笑みを浮かべながら鉄パイプや金属バットを持ってやってきた。
気づけば後ろからもやってきている。
軽く300なんて超えていそうだ
「はぁ〜あ」
今からこれだけの人数の相手にすることを考えるだけでダルい。
思わず溜め息つきながらバイクからおりる。
でもなんだかんだで殴り合いの喧嘩なんて随分やってなかったな…
そう思っているうちに北の奴等が束になって凶器を振りかざし迫ってきていた
女といっても最初から手加減無しか。
自然と上がった口角
いつの間にか皆もバイクからおり小さなストレッチをしていた。
猟奇的な笑みを浮かべ熱い吐息を吐く辺り心配は無いようだ。
敵との最短距離約50m程。
あとはあたしの一声だけだ
「紅蓮も随分と嘗められたもんだな
げと、まぁいいや」
余裕たっぷりに笑って
「今から」
男共の怒声が飛び交う辺り一帯にあたしの声が不思議と透き通るように響き渡る。
「たっぷり嬲ってやるからさ」
吐き捨てるように言った言葉を皆は聴き逃しはしなかった
なんせ、
その言葉と同時に視界の端で次々と紅い残像が暴れ狂う気配がしたから