君と歩く

私がそう言うと、私の顔を覗きこんでいた荒川くんの顔はなくなった。

そして、私の体は荒川くんの匂いに一気に包まれた。

一瞬何が起こっているのかわからなかったけど、少したってから理解できた。

私の背中には、荒川くんの手が回っている。
首には、荒川くんの顔が埋められている。

…私は荒川くんに抱きつかれていた。


「えっ…ちょっ…」

私が慌てて離そうとすると、弱々しく荒川くんは、言った。

「少しの間だけ、こうしてたい。」

嫌だなんて言えなくて、私は、「うん…。」と言うしかなかった。

< 217 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop