君と歩く
私がそう言うと、私の顔を覗きこんでいた荒川くんの顔はなくなった。
そして、私の体は荒川くんの匂いに一気に包まれた。
一瞬何が起こっているのかわからなかったけど、少したってから理解できた。
私の背中には、荒川くんの手が回っている。
首には、荒川くんの顔が埋められている。
…私は荒川くんに抱きつかれていた。
「えっ…ちょっ…」
私が慌てて離そうとすると、弱々しく荒川くんは、言った。
「少しの間だけ、こうしてたい。」
嫌だなんて言えなくて、私は、「うん…。」と言うしかなかった。