煙草味のキス。
1ヶ月後に和也と付き合って3年目になる時だった。
真剣な顔をして和也は話があると言った。
『高校の時、女にガキができた』
『え…』
『女はガキができた瞬間俺の前から姿を消した』
『元カノ…?』
『いや……当時のセフレ』
『…セ……フレ』
高校の時、確かに女にだらしなかったと緑から聞いていた。
でもセフレがいたなんて…。
『ガキができてたことを今の今まで知らなかった』
『どうやって知ったの…?』
『女の旦那が偶然会社の上司で、酔った時に話てくれた。
妻は高校の時にセフレとの間に子供ができ、堕ろせと言われたくなくてそいつから逃げて産んだと』
『それが和也とは限らないじゃないっ』
『俺なんだよ…奥さんの名前も聞いたし、本人とも話をした』
『嘘…』
『もう結婚もして、今は幸せだから子供のことは聞かなかったことにしてくれと頼まれた』
『……で、和也はあたしに何を言いたいの?』
『和子には話をしておきたかった』
和也は言い訳とか何も言わなかった。
ただあたしの返事を待っていた。
『そう……少し時間をちょうだい』
でもあたしは和也から逃げた。
今思えばきっと和也は不安で不安で仕方なかったはずなのに、あたしは自分を守ることで精一杯だった。