煙草味のキス。
「着いたぞ」
和也の車が止まった場所は海だった。
「なんで海なのよ、寒い」
「この季節誰もいねぇだろ」
だから静かに話せる。
そう言って、和也は煙草を取り出した。
その煙草の箱を見た瞬間、目を見開いて身体が硬直した。
「煙草……変えたの?」
震える声であの頃とは違う銘柄の煙草を口に咥える和也に聞いた。
「ん?あぁ…お前と別れてからな」
「そう…」
馬鹿だな…もう和也は過去なのに…。
なんだか寂しくなってしまった。
こう和也と会って、あの頃と変わった所を見るとなんだかもうあの頃とは違うんだと思い知らされているように感じた。
「なぁ、和子」
「何?」
「ごめんな」
「…なんで謝るの?」
「俺の馬鹿みたいな過去のせいで和子を傷つけてしまったから」
眉毛を下げて困った様に笑う和也。
本当に反省している時に見せる和也の表情。
そんな所は変わってないんだ…。
「和也、あたしもごめんね」
「なんで和子が謝るんだよ」
「和也の過去を受け止めることがあたしにはできなかったから…」
ずっと謝りたかった。
あれから少し大人になって、過去を冷静に受け止められる様になった。