煙草味のキス。
「和也も苦しかったのにね」
この世界に自分の子供がいる。
そんなことがいきなり起きていたら誰だって驚くだろう。
況してその時、自分には彼女がいるんだもの。
辛いはずだ。
なのに、あたしは
「あたしは和也の苦しみを受け止めきれなかった」
本当の自分中心野郎はあたしだ。
「仕方ねぇよ。あの時お前は高校を卒業したばかりのまだ子供だったんだから」
「…そんなの言い訳にはならないわよ」
和也から“子供”なんて言われたくなかった。
対等に扱って欲しい。
「そのことを謝りたかったから今日わざわざ帰ってきたの?」
「…いいや、今日は祝うため」
「祝う…?」
和也の言葉に疑問を持ちながら右手で左手を撫でる。
「明日、成人式だろ?」
「あ…あぁ、成人式ね」
「約束しただろ?」
「…そういえばしたわね。でも、もう無理でしょ?」