煙草味のキス。
和也と別れて初めて流した涙。
____涙を流すことをずっと我慢していた。
だって1度だって涙を流したらもう、一生和也との過去の思い出だけで生きてしまいそうで怖かったから…。
「そんなこと言うなら………嫁ぐなよ」
目の前にいる和也が辛そうに見つめながらあたしの頬を撫で
「俺じゃないものなんかになるなよ」
ゆっくりそして強く抱きしめた。
「…何言ってるのよ。あたしじゃない人を嫁がせたくせに何言ってんのよ」
和也の胸元を強く叩いて拒否を示したあたし。
「……それ言われたら何とも言えねぇな」
和也はそんなあたしから笑いながら腕を解いた。
「和也の過去をちゃんと受け止めてくれた人でしょ?…大切にしないと」
あたしはできなかったから…。
言いそうになった言葉を唇を強く噛んで我慢した。
この言葉は言っちゃいけない気がしたから。
「和也…」
「ん?」
「お互い幸せになろうね」
「…なりてぇな」
「何それ…なってるくせに」
「和子!泣くな」
「いきなり…なんなのよ」
泣くことすら、こいつは許さないのか。
そう思いながらも“幸せになってる”と言われなかったことにホッとした。