煙草味のキス。


「あたしも和子のキスシーン見てみたかったな」



「見てどうするのよ…」


本当沙由は何を考えてるのか…。



「なにって興奮する」


沙由は恥ずかし気もなしに言った。



「…あんた女としてそんな発言やめたら?」



きっとこの子緑だけのせいで、何人も彼氏と別れた訳じゃないわ。



「沙由って和子のキスシーン見たことねぇの?」



「ないわよ。え、緑そんなに太郎ちゃんと和子のキスシーン見たことあるの!?」



「そんなこと聞くな」



恥ずかしいにも程があるわ。



「太郎は昨日が初だけど和兄とのキスシーンなら何回も見たことあるぞ」



丁度紅茶に口をつけていたせいで、緑の発言に驚いて蒸せてしまった。



「ちょっ、和子大丈夫?」



「だ、だい、……っ大丈夫」



「なんだ、なんだ。俺の発言に驚いたか」



ティッシュで口元を拭きながら笑っている緑を睨む。




「緑…和也の話はやめて」



「なんだよ、まだお前の中で終わってない話なのかよ」



緑の人を挑発するような言葉に腹が立つ。

きっと緑も、泣きそうな顔で心配そうに見てくる沙由もあたしの本当の気持ちに気付いている。


でもあたしは、



「そういう訳じゃない。ただ…ただ和也はもう結婚したんだからそんな過去の話したら奥さんに失礼だから」



自分に嘘をつく。

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