煙草味のキス。
昔々の話。
あたしが隣の県からこの町に引っ越して来た頃、初めて会話をしたのが緑の5歳上の兄、和也だった。
『おっ、この家に引っ越して来た家族ってお前?』
『そうですけど…』
『ふーん。俺真向かいの家の長男。お前名前は?』
『小袋和子…』
『和子?和装の和に子ども?』
『そうですけど?』
『まじかっ!俺和也!漢字も読みも一文字違いって何かウケるな。
よろしくな、和子』
そう言って和也は吸っていたタバコの煙をあたしの顔に吐いてきた。
あいつは初対面からずっとタバコを吸っていた。