煙草味のキス。
なんなの、あいつ。
「おっ、お待たせ」
緑はそう言って笑って真向かいの家から出て来た。
「緑、家の前にいたんじゃなかったの?」
「な訳ねぇじゃん。寒いからリビングで電話して、和子が出てきたタイミングで家から出て来た」
「本当そう言う事だけ頭が回るんだから。で、何?」
急いで損した。
「…ちょっと歩かね?」
「…いいよ」
返事をすると、緑はゆっくりと歩き出し、そんな一歩前を歩く緑の背中をぼんやり見つめながら後ろを歩く。
兄弟って本当に似るんだ…。
まるで緑の後ろ姿はあの頃の和也にそっくりだ。
あの笑い合って、手を繋いで、キスをしていたあの頃の和也にそっくりだ。
「和子、何か飲み物買わね?寒い」
そう言って振り向いた緑の目の前には自動販売機。
「………あ、あたしレモンティー」
意識が飛んでた分、返事が遅れた。
「俺が奢るのかよ」
「当たり前じゃない。あんたがあたしを呼び出して今こうしてるんだから」
「きっちりしてんな」
緑は悪態をつきながらレモンティーとココアのボタンを押した。