強引男子のイジワルで甘い独占欲
「絶対赤くなってるで……」
口を尖らせながら、絶対赤くなってるでしょ!と責めようとしたけど、その途中で思わず言葉が止まった。
それは、唇に何かが触れたからだったのだけれど。
その何かが、今までの経験と今の感触を照らし合わせて予想するに、誰かの唇なんじゃないかと思ってしまって戸惑うというか驚くというか、とにかく訳が分からなくて混乱していた。
だって、誰かの唇があたったとして、それは今の状況から考えれば絶対に眞木なわけで。
けど、眞木が私にキスなんかする意味が分からないし、万が一本当にキスしていたとしても何かバランスを崩してとかそういう類のハプニングキスだろうけど……。
それにしたって座ったままの状態で一体何があればバランスを崩すのかだとか、もしかしたら唇があたったなんていうのは視界を奪われた状態の私の先入観と勘違いであって、指先だとかそういうものがかすっただけかもしれないとか。
色んな事がどこかの海峡の渦みたいに頭の中をぐるぐる回っている私から、眞木がゆっくりと手を離す。
その直後、館内の明かりがついて、今度は眩しさが視界を奪った。
だんだんと目が慣れてきて隣を見ると、出るか、と眞木が普通の顔で普通のトーンで言った。
「出る……か。うん」
眞木があまりに普通だから少し拍子抜けしながらも、頷いて席を立つ。