強引男子のイジワルで甘い独占欲


やっぱりあれは私の勘違いだったのかもしれない。
唇が触れたように感じたけれど、眞木の指とか服とか、そういう何かが触れただけであって何でもなかったんだ。

だって眞木はこんなに普通だし。
そんな風に思って、少し強引気味に自分を納得させて、混乱して散らばったままの頭を落ち着かせる。

何はともあれ、私の勘違いでよかったとホっとしながら脇の通路に出て劇場の出口に向かって歩いていた時。
数歩前を歩く、休日だっていうのになぜか制服の女子高生グループがチラチラこっちを見ている事に気づいた。

眞木が美形だから噂でもしてるんだろうと思いながらもその子たちの後ろを歩いていると、女子高生五人の会話が聞こえてくる。

「モデルかな、カッコよすぎない?」
「だよね! なんか雑誌で見た事ある気がするし」
「あ、私も思ってた! あれでしょ? 二組の本田がよく持ってきてる雑誌!」
「そうそうー。本田も身の程知らずだっていい加減気づけよって感じだけど。本田とあの雑誌不釣り合いすぎるよね」

目の前の聞こえる距離で。しかもこちらを振り返りながらこんな会話をする女子高生に、さすがだなと呆れ笑いをしつつ、あと二組の本田くんをどんまいと励ましつつ、隣を歩く眞木を見上げる。
モデルだって、と小さな声で言って笑うと、眞木は少し眉間にシワを寄せる。


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