強引男子のイジワルで甘い独占欲


昨日の午後、と付け足されて、確かに慎司と話した事を思い出す。
だけどあんなの、仕事の話をしただけだ。

「あれは、昨日仕上がったばかりのお客様向けの資料があるんだけど、それを配ってただけだよ。
営業部行ったら何人か午後の営業出ちゃったって言うから、ロビーまでおっかけて渡しただけ」
「けど、別れて一ヶ月しか経たないんだから、何かしら感情はあるんじゃねーの。
あんなに泣くくらい好きだったヤツだろ」

言われてから、確かにそうだなぁと呑気に思う。

昨日資料を渡した時、慎司は若干気まずそうだったけれど、私は至って平常心だった。
それは意識したからとかではなく、本当に普通に接することができたって意味だ。

別れて一ヶ月なんだから、慎司みたいに気まずさを覚えてもいいハズだし、やっぱり好きだってツラくなってもおかしくないのに……。
私ってこんなにも切り替えの速い女だったかと疑問に思う。
サバサバ見られがちだし、実際もそういう傾向ではあるけれど、そこまでじゃなかったのに……どうしたんだろう。

眞木に指摘されるまで、慎司と話した事を完全に仕事のうちのひとつとしか捕えていなかった。
慎司をまったく意識していなかった。





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