強引男子のイジワルで甘い独占欲
「え……っ」
まぁ、小谷先輩がこんな反応になるだろうなっていうのは想像がついてたけど。
そのまま十秒間くらい驚いた顔のまま固まってしまうから、さすがに大丈夫かと思って名前を呼んだところで、先輩が現実に戻ってきた。
一応言っておくと今は業務時間中だ。
堂々と脳内エスケープしていいわけじゃない。
「佐野さん、今の本当なの……?」
こんな私語だって堂々としていいわけじゃないのに、小谷先輩は今それどころじゃないようだった。
そして、周りで聞き耳立ててる社員もしかり。
業務時間内だっていうのに、キーボードを叩く音どころか書類にボールペンを走らせる音すら聞こえない。
課にいる社員が全員して私と小谷先輩の会話に集中しているようだった。
どうなってるんだ、この会社は……と呆れ笑いをもらしそうになりながらも、まぁ聞いてもらっても問題はないしと割り切る。
それに、小谷先輩がこういう事態に陥ったのも、周りにいる社員の仕事の手を止めたのも私だし。
眞木と付き合っているって噂が本当にデマなのかって聞いてきた先輩に、あ、それなんですけど眞木と話し合って付き合う事にしました、なんて返事をした私のせいだ。