強引男子のイジワルで甘い独占欲


眞木は嘘をつくような男じゃないから、きっと今言っていたのは事実だ。
つまり慎司は、朋絵に騙されてほだされて、それで私を振ったのか。

二年も付き合った私の想いじゃなくて、朋絵の演技の想いをとったのかと思うと、慎司をまったくバカな男だなとも思ったけれど、それよりも朋絵に対する苛立ちの方が大きかった。

慎司が悪くないとは言わない。自業自得だ。
でも、慎司を好きでもないのに私を見返すためだけに騙した朋絵の気持ちはこれっぽっちも分からないし、正直、軽蔑すらしてしまっていた。

今まで私が見てきた朋絵って誰だったんだろう……と、ふと思う。

「違う……っ、私、本当に眞木さんの事が……」
「言っただろ。俺は木原に好意なんて持った事ないって。
それどころか、マイナスのイメージしかない。ただ真っ直ぐに生きてるだけの佐野を勝手にひがんで傷つけて……」

そこまで言ってから、眞木は一呼吸おいて。

「俺が殴りかかる前に早く帰れよ。もう二度と来るな」

低い声で威圧するように言った。
直後、バタンとドアが閉められ鍵がかけられる。
恐らく、朋絵が立ち去る前に眞木がそうしたんだろうと思っていると、眞木がリビングに戻ってきて隣に座った。

その様子をぼんやり見ていると名前を呼ばれて、ハっとして笑顔を作る。


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