強引男子のイジワルで甘い独占欲
思い出されるのは、去年のバレンタインデー。
眞木を迷惑そうに見たかどうかは忘れたけど、会社から少し離れた場所で慎司にチョコを渡したのは覚えてる。
社内では渡せなかったし、翌日は慎司が出張で朝早いって話だったから特にご飯を一緒に食べるとかいうわけでもなくチョコだけ手渡した。
一応、会社から離れた場所を選んでの行為だったのに、まさか見られてたなんて思わなかった。
しかも眞木に。
「で、相手の男が同じ会社のヤツだって知って、名前を知って……その直後くらいに木原が同僚と話してるのを聞いて。
三坂の相手がおまえだって知ってたから、その後告白してきた木原に頷いたんだ」
「そうだったんだ……」
「言って欲しかったか? 三坂がおまえに別れを切り出した時に」
そうしたらきっと今は変わってたかもしれない。
そう言った眞木が私をじっと見つめる。
その瞳をしばらく見つめ返した後、微笑んで首を振った。
「ううん。眞木が言ってくれたところできっと慎司の答えは変わらなかったから。
ちょっとしたケンカではすぐに謝るくせに、大事な気持ちは絶対に曲げないの。
だから、これでよかっ……」
だから、これでよかったんだよ。
言いかけてハっとする。
いいわけがない。だって慎司は騙されたままなんだから。