強引男子のイジワルで甘い独占欲
「じゃあ佐野ちとせ」
「フルネームやめてよ」
「おまえもだろ。その前に多分俺の方が何年か先輩なのに敬語も使わないしどうなってんだよ」
「え、ああ……そっか、先輩になるのか。
普段仕事で関わった事ないからあんまりそういう感じがしなかったけど、確かにそうだ……すね」
強引に敬語にした結果変な語尾になった私に、眞木隼人が我慢できなかったのか私とは逆方向に顔を逸らせてから笑いを吐き出す。
眞木隼人も笑うのかと当たり前の事に思わず感心していると、まだ笑っている瞳が私を見た。
その表情は本当に楽しそうで、いつもの仏頂面よりも幼く見えて。
その意外性に不覚にもほんの少しドキっとしてしまった。
ギャップってやつだろうか。
「だすねってなんだよ」
「そっちが敬語使えなんて言うから変になっちゃったんですよ」
「いいよもう。散々タメ口聞いてて今更だし」
「あ、そう? じゃあ」
「ただフルネームはやめろ。連呼されるとうっとうしい」
「じゃあ眞木」
さん付けもなしかとまた少し呆れて笑ってから、眞木も私を佐野と呼び捨てにした。
いい大人の男女が名字呼び捨てし合うってなんだかおかしいけれど、まぁいいかと思いながら歩き続けて……10分経ったところで疑問が浮かんだ。