強引男子のイジワルで甘い独占欲
とりあえず、さっき頭を下げられてまでお願いされた事への返事だけして背中を向ける。
そして眞木に「かなりの覚悟で来てるんだから、ちゃんと話を聞くように」と注意してから、帰ろうと歩き出したのに。
眞木が腕を掴んだせいで強制的に立ち止まらせられる。
見上げると、眞木は私の腕を掴んだまま井川さんを見ていた。
こちらに視線を向けていないけれど、腕は掴まれたままだしここにいろって事らしい。
でも、こんな話、井川さんだってふたりきりの方がいいに決まってるし、私だって聞きたくない。
だからそれを言おうと思ったけれど、眞木が口を開く方が早かった。
「話したい事ってなに?」
私がいたら言いにくいと思ったから席を外そうとしたっていうのに、眞木がストレートに聞く。
その辺の空気が読めないヤツじゃないから、眞木はきっと分かってて私をここに留まらせているんだろうけど、その意図が分からず戸惑ってしまう。
聞かれたら井川さんだって気まずいだろうにと。
チラっと見ると、井川さんは予想通り言いにくそうにしていたけど、眞木の態度に諦めたのか、ゆっくりと答え始めた。
「私、ずっと後悔してたの。隼人くんに自分の気持ち全部を見せられなかった事。
鬱陶しがられるんじゃないかとか、嫌われちゃうんじゃないかとか、そういう事ばかり怖がって……別れてから、いつも黙ってばかりだった私に隼人くんが別れたいっていうのも当たり前だと思った」
「だから、変わったの」と、井川さんが顔をぐっと上げ眞木を見つめる。
強い意志のこもった眼差しが、会社の窓から漏れる社内の灯りにキラキラと光っていた。