強引男子のイジワルで甘い独占欲

「こいつ、男に振られたくらいで人だかりの中でしゃがみ込んで延々泣き続けてたし。
その後も、会社で泣きそうになったり、実際泣いたりしてた。
そういうの、女々しいって言うんじゃねーの」

「俺は、そういう佐野を知ってて好きになったんだし、性格の問題じゃない」と眞木が言う。

「佐野は、口にすぐ出すし俺に遠慮もなにもないヤツでそういうところも気に入ってるけど、そういう部分だけを好きになったわけじゃない」
「……私が、例え佐野さんと同じような性格になったところで、ダメだって事？」
「佐野が例え前の井川みたいに大人しいヤツだったとしても、俺は多分、こいつの気持ちを聞きたいと思って無理やりにでも吐かせてる。
分かってやりたいと思うから」

間髪入れずに答えた眞木が、井川さんを見つめたまま続ける。
その真っ直ぐすぎる横顔を見つめた。

「井川が佐野と同じような性格になったとしても、俺は井川の気持ちを分かってやりたいとは思えない。
井川が悪いんじゃない。別れたのは、俺の気持ちの問題だ」

ハッキリと告げた眞木。
そんな眞木を涙ぐんだ目でぼんやりと見たまま、井川さんは何も言おうとはしなかった。