強引男子のイジワルで甘い独占欲


何度来たの、と聞いた私に、歩き続ける眞木は二回、とぼそっと答える。
もう完全に迷子なのが分かってるだけに、バツが悪そうに言う眞木が拗ねている子どもみたいに思えて思わず笑ってしまった。

それから、確か二階だったっていう眞木の証言を信じて、二階の飲食店の集まる場所まで案内すると、眞木がお店の看板を見つけて無事店内に入る事ができた。

時計を確認したショップから二分程度で辿りつく場所にあったにも関わらず、その十倍は歩き回ったおかげでか、完全に混み合う時間帯は過ぎていてすんなりと席に案内されて。
お店のおすすめだっていう、太麺の味噌ラーメンをふたつ頼んだところで、隣に座る眞木を見て笑う。

「まさか方向音痴だとは思わなかった」
「方向音痴じゃない。ただ、こういう建物の中に入ると分からなくなるだけだし。
入口が何か所もある場所って方向感覚狂うだろ」
「そう? 私は分かるけど……。
あ、もしかして、どの入口から入ってきたか忘れちゃうタイプ?」

黙秘する眞木に、ああ図星かと思いながら、顔がにやつかないように耐えていると、眞木がこちらを向く。
こっそり笑った事がバレたのかと内心ぎくっとしていると、まるで観察でもするようにじっと見つめている眞木と目が合った。



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