強引男子のイジワルで甘い独占欲
香ばしい香りが白い湯気と共に立ち上がってきて、さっきまで微塵もなかった食欲が身体の奥から湧いてくるのが分かった。
失恋したばかりでラーメンとか、本当だったらありえないハズだったのに。
「食えば」
湯気を立てるラーメンをじっと見つめていると隣から言われる。
見れば、眞木が割り箸を差し出していた。
「言われなくても食べる。
あーあ。せっかく精神的ダメージから三日くらい絶食になって体重減るハズだったのに」
ぶつぶつ言いながら割り箸を受け取ってから、ぱちんとふたつに割る。
「佐野、太ってないのに? 太ってない女ほど体重気にするよな。女の七不思議」
「太ってはないけど痩せてもいないし。
まぁでも確かに痩せればキレイになれるっていう気持ちは男には分からないかもね」
特に眞木みたいなもてはやされる外見を持ってる人は、と付け足してから、いただきますと手を合わせる。
お店のおすすめとだけあってそのおいしさはいつもインスタントラーメンの私には衝撃的なものがあって、思わずおいしいともらすと、隣で眞木が自慢げにそうだろと笑った。
別に眞木が作ったわけじゃないのにと思いながらも、その顔はまるで子どもみたいで思わず笑ってしまう。
本当にこの人、色々子どもみたいだ。
図体は大きいくせに。
「女の七不思議って、他に何かあるの?」
食べながら聞くと、眞木も箸を進めながら答える。