強引男子のイジワルで甘い独占欲
呆れて笑ってから、ラーメンと向かい合う。
ラーメン屋に入っておきながら悠長に話なんかしてる場合じゃなかった。
伸びちゃったらもったいないしその前に食べきらないと、せっかくのおいしいラーメンが台無しだ。
そう思いながら箸で麺をつまんだ時、少し黙っていた眞木が言った。
「いや、正真正銘の潔癖症。
でも、佐野の髪触ってもなんとも思わなかった」
麺を箸先で持ち上げたまま隣を見た私に、眞木がふわっと微笑む。
「俺、佐野は大丈夫みたいだ。
涙でぐしゃぐしゃになった顔見ても汚いとか思わなかったし」
「……汚いとか、他人の顔見て思うとか最低だからね」
「ああ、言い方が悪かった」
「悪すぎでしょ……。引っぱたかれてもいいレベルの侮辱だし」
思わず苦笑いをこぼすと、眞木は代わりの言葉を探しているのかまた少し黙って。
それから、私に視線を向ける。
「佐野の泣き顔は可愛いと思った」
佐野ちとせ、24歳。大卒で入社して二年目。
今日、二年付き合った彼氏に目の前で裏切られました。