強引男子のイジワルで甘い独占欲


朋絵は目立つタイプじゃないけれど、いつも柔らかく微笑んでいるような感じで雰囲気も温かいから。
愛想が悪く尖って見える眞木隼人とは正反対だから、そういう部分に惹かれたのかもしれないなぁなんて憶測していると、眞木隼人と目が合う。

黒髪の短髪に鋭いまなざしは、草食というより獲物を見つけたらすぐさま襲い掛かりそうな肉食に見えてしまうけれど、顔立ちが整っているのは確かだと思う。
アイドルみたいな愛嬌はないけれど、モデルでならやっていけるんじゃないかって思えるほどの美形だ。

「朋絵のいとこの佐野ちとせです。
同じ会社だから知ってるかもしれませんが……」

一応挨拶くらいは、と自己紹介をしていた時。
隣に立っていた慎司が急に、ちとせ……と呟くように言った。

どうしたのかと思って隣を見れば、顔をしかめた慎司が、朋絵から私に視線を移すところだった。
あまりにつらそうに細められた瞳に見つめられて黙った私に、慎司がゆっくりと告げる。

「俺、もうちとせとは付き合えない」
「……え?」
「ずっと考えてたんだ。どうすればいいのか……。
ちとせと付き合い続けた方がいいのは分かってる。だけどもう無理なんだ」

こんな場所で、しかもこのタイミングで何を言い出すんだっていう思いが一番に浮かんだけれど、慎司の真剣な顔にそんな考えは飛んでいく。
慎司が冗談でこんな話をする人じゃないのは知っているから。


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