強引男子のイジワルで甘い独占欲


隣に座る小谷先輩が話しかけてきたのは、ちょうどお昼を回った時だった。
それまでもずっとそわそわしていたから、お昼休みになるのを待っていたのかもしれない。

また噂ですかと苦笑いを返しながら、節電のためにパソコンを休止状態にする。
電気もお昼休みは極力消すように言われているから、なるべく同じオフィスを使っている部署は同じ時間にお昼休みをとるのがルールだ。

それにしても本当に噂を生きがいに会社に来ているような人だなと呆れて笑ってしまう。
小さな会社じゃないから、毎週のように真新しい噂が生み出されるこの職場環境は、噂好きな小谷先輩にはもってこいかもしれないなと思ったのはもう随分前の事だ。

「佐野さんと眞木さんが一緒にランチをとるほど親密だってすごい勢いで広まってるみたいよ」
「ああ……はい。まぁ嘘ではないです」
「え、そうなの?! でもこの間の時は違うって言ってたじゃない。
それなのに急に親しくなったの?」

驚いて聞く小谷先輩の他にも、私の答えに聞き耳を立てている様子の社員が何人かいるのが視線で分かった。
うちの課は小谷先輩と私を含めて七人が机を並べているけれど、普段は週替わりで流れる噂にわざわざ興味を持つ人はいない。

信憑性なんて関係なしにいちいち喜んで我先にと踊らされる小谷先輩と違って、他の人は人事系の噂以外はへぇふーんと話題に上がっても流す程度で気にする素振りも見せない。




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