強引男子のイジワルで甘い独占欲
私が入社するより前は、お弁当屋さんが出入りしていたらしい。
値段も社食とそう変わらず、メニューも一日三種類くらいでまさに社食と人気を等分していたけれど事情があってお店をたたんでしまったらしく。
それから他のお弁当屋さんが入ったりもしたけれど、値段が高かったりで需要と供給がうまくバランスが取れずに、お弁当屋さんが来る事はいつの間にかなくなってしまったっていう話を情報通の小谷先輩から聞いた。
安価の社食とお弁当。
それがずっと続いていたからこそ、愛妻弁当を持ってきそうな年配の社員の方でもそれはせず、会社で済ませる風習があって、お弁当屋さんがこなくなった今も家庭で用意するわけでもなく社食で済ませる人が多いらしい。
もっと愛妻弁当を持ってくる人が多くてもよさそうなものなのになんでだろうとずっと疑問に思っていたから、小谷先輩の話を聞いてすごく納得したのが一週間ほど前の話だ。
「変な顔してるけどどうした?」
「どうもしてないし変な顔もしてない」
「嘘つけ」
変な顔だと言われてしまってぷいっと顔をそむけながら歩いていると、眞木がそれを覗き込むようにして笑う。
「おまえが早口に否定する時はたいてい嘘ついてる時だろ」
得意げな顔で見てくる眞木を睨んでからまた目を逸らすと、答えない私の代わりに眞木が正しい解答を口にした。
「どうせ三坂の噂のせいだろ」