あと一粒の命

境目

おじいちゃんに肩を抱かれて泣きながら歩くおばあちゃんをみて

羨ましい,
そう思った。







その日の夜、何をしたわけでもないけど唐突に日記を書きたくなった。
ベッドの横にある机にメモ帳とペンが置いてあった。
一枚ちぎってペンを握った。

2月15日
両親が死にました。
祖母が泣き崩れました。
私は泣けなかった。
心臓が痛くて痛くて。
張り裂けそうだった。

ねぇ、ママ、パパ。
事故したとき痛かったよね?
いまでも鮮明に呻き声とトラックとぶつかった瞬間の音が、耳から離れないの。
ぶつかる瞬間ね、目、つむっててパパとママの最後の顔、みれなか







ここまでかいてやっと一粒の涙が出てきた。
紙に書いた「みれなか」の「か」に雫が落ちてみるみるうちに滲んでいった。
もっと泣けばきっと楽になれるはずなんだけど。一向に出てきそうになかった。

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