電波的マイダーリン!
焦る瑞希に慌てて首を振って見せ、否定を示す。
「そうじゃなくてですね!?さっき…」
「“さっき”?」
「…あたしのこと放っておけば、もしかしたらあたしの気持ちが変わってて…そしたら…
……好都合、だったんじゃないかな…」
あたしの躊躇いがちな言葉に、瑞希が息を呑むのを察した。
たぶん、瑞希もそう思ってたはずで。
あたしが伊吹とハッピーエンドになったならば。
伊吹が好きな花梨は失恋したことになって。
そしたら瑞希にチャンスがあるわけで。
だけど瑞希は、大きなため息をついた。
「あのねぇ?さっきも言ったけどー。俺は誰かの弱みにつけ込むようなのは嫌なわけですよわかりますぅー?」
片眉を持ち上げて話す瑞希に、あたしは「は、はあ…」と曖昧に頷く。
けれどその直後、瑞希は項垂れたように俯いて。
「…けど、俺もそうなったらって…ちーちゃん助けに行くの、やめようと思わなかったわけじゃない…。
俺はズルイよ。
花梨のことが好きで、この思いが叶ったらって思うけど…でも、俺はちーちゃんにも幸せになってもらいたいんだよ…。
一つのことには、俺、欲張って突き進めないんだ。他にも欲しいモンがあるからさ…。
だから選べなくて、ズルイことすんだ…。
俺って、いろんな意味で最低なんだよ…」
話す声は、次第に震え、弱まって。
俯いたままの瑞希は、それでも顔を隠すように右手で顔を覆う。
しかし、それは最後の抵抗なのか、しゃがみ込もうとはせずに。
あたしはどうしたらいいのかわからなくて。
咄嗟に、瑞希の左手を緩く握った。
そしたら悲しいのが伝染してきて、あたしまで涙が溢れてきた。
「…瑞希は最低なんかじゃないよ。サイコーだよ」と、あたしは言った。
「…そりゃどーも」と、瑞希は言った。