電波的マイダーリン!
振り向きたくない。
本能がそう伝えてくる。
けれど、振り向かなければならない気がした。
……いや。
“彼”がそうさせているのだ。
ゆっくりと、顔を声の主へと向ける。
その一連の動作を、ここまで嫌だと思ったことはなかっただろう。
そして瞳に映った人物。
「…あぁ、やっぱり。チィじゃないか」
ふわふわとパーマがかったようなクセのある、黄色に近いオレンジの髪。
その下にあるのは、紳士的な笑みを貼り付けた、綺麗な顔。
――“あの日”と変わらない、“彼”の姿だった。
「……あ…葵(あおい)……」
震える声で、“彼”の名前を口にした。
すると、彼、葵は「あはは」と、落ち着いた笑い声を上げ、こう言った。
「違うだろう?“葵”じゃなくて――…
…――“お兄ちゃん”…だろ?」