電波的マイダーリン!
葵は自分の前に立ちはだかった花梨を見下ろし、「やあ」とにこやかに。
「久し振りだね、花梨ちゃん。元気にしてたかい?」
花梨はワザとらしく愛想の良い笑みを浮かべる。
「ええ、とても。それで、ウチの千早になんのご用で?」
手っ取り早く話を済ませたいのだろうと思う花梨が、本題を切りだす。
葵は困ったように笑いながら、手の中にあるものを差し出す。
「まいったな。僕は、君に嫌われているらしいね。
はい、これ。これを渡すために呼びとめたんだよ。携帯。チィのだろう?」
確かに、葵が差し出したそれは、あたしが昨日落としたはずの携帯だった。
花梨は驚いたような表情をして、携帯を受け取る。
「…どうして、これが千早のだってわかったんです?」
用件が携帯だけだったにも関わらず、花梨は警戒気味に尋ねる。
「昨日それを拾ったんだけど、君から電話がかかってきてね。直感的にそう思ったんだ。それだけさ」
花梨の態度なんて気にも留めず、葵は問いに答える。
「…そうなんですか、それはどうも。じゃ、あたしたちはこれで失礼します」
携帯を握り締め、花梨は軽く頭を下げると、呆然としていたあたしたちへと顔を向け、
「ホラ、行くよ」
と促し歩きだした。
それに従うみんな。
あたしはカイトに庇うようにされて歩きながら、チラリと後方を振り返る。
葵はそこには居なかった。