電波的マイダーリン!





――そう。


あたしは少し前まで、“榊”じゃなく、“如月”だった。

『如月千早』

これがあたしの名前だった。


あの“葵”と“兄妹”だった。



“義理”の。



もともと、ウチのお母さんは一人だった。

一人であたしを、小学校に入る前まで育ててくれていた。

けれど、突然、小学校に上がるとともに家族が増えた。

初めて見る”お父さん”と呼べる人は、とても優しい人だった。

そしてあたしの一つ上の、男の子が一緒に家族になった。

それが葵。


『葵くんって言うのよ!千早ちゃんのお兄ちゃんになるの!仲良くしてね』

『…“お兄ちゃん”?』


初めて聞く単語、初めての存在。

戸惑うあたしに、葵はとても優しい笑顔で『よろしくね』とあたしの頭を撫でた。

葵に対する初めての印象は、“優しい人”だった。






「…え、ちーちゃんって、苗字変わってたの…?」

「そうよ。高二になってからね」


驚く瑞希に、花梨は答える。


「わかんなかった…っていうか、知らなかっただけだけど…でも、真中先生とか超普通に呼んでない…?」

「すごいわよねーあの先生。すぐに覚えたもの、苗字。間違えたこともないわよ」


あたしも、真中先生には感謝してる。

あたしの苗字がすぐに馴染んだのも、先生のおかげだ。

ホント、すごいと思う。





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