電波的マイダーリン!
……る、直前に抱き止められた。
ぬくもりで、誰なのかはすぐにわかった。
顔を上げ、名前を口にする。
「…か…カイト…」
あたしの、泣きたいのに涙すら出ない最悪な顔を見下ろし、カイトは眉根を寄せる。
「…千早…どうしっ」
「カイトォ…ッッ!!」
カイトの言葉を遮って、あたしはカイトに抱きついた。
カイトは驚いたようにあたしの頭に手を回し、困惑したようにあたしのことを呼ぶ。
「…千早…?」
「…イヤだ」
「なに…」
「家に帰りたくない…ッッ!!」
ギュッとカイトの胸板に顔を押し付ける。
我慢していた涙が次々に流れ出してくる。
「…もうイヤだ…イヤだイヤだ…イヤだよぉ…
…お母さんなんて大嫌いだ…ッッ!!!!
…カイトと居たい…ずっと一緒に居たいよぉ…ッッ!!!!」
カイトの手が、スッとあたしから離れる。
それからあたしを離し、次いであたしの右手をグッと掴んで引っ張った。
唇が触れそうなほど顔を寄せ、カイトは真剣で微かな上目遣いであたしを見つめ――…
「…じゃあ、逃げる?」
…――甘く静かな声で、そう言った。