電波的マイダーリン!
「…千早、大丈夫だから」
ふわっと。
抱き締められるそのぬくもりに、あたしの震えは魔法のように止まる。
恐怖すら薄らいでいく。
「俺が居るから、大丈夫だよ」
カイトが、あたしの頭を撫でる。
そのリズムが、あたしを静かに落ち着かせていく。
不思議だ、と思った。
カイトと居ると、安心するのは、何故だろう。
あたしはしばらく、目を閉じて、カイトにずっと寄り添っていた。
――襲われた、と言えば、きっとそうなんだろう。
けど、確実に“襲われた”と言えないのは、葵が途中で止めたから。
泣き喚くあたしを見下ろし、冷たい瞳で見下ろし。
部屋から出ていった。
その瞳を、その背中を、あたしは今でも鮮明に憶えている。
好きだけど、違う。
こんなのは違うと、あたしは思った。
それから葵と顔を合わせることなく、一年が経ち。
目の前に現れた葵は、少しだけ大人びて、けれどまったく変わっておらず。
平然と話し掛けてくる葵に、恐怖と戸惑いを覚えたのは当然のことだった。
途切れ途切れでカイトにそう話し、気がついた時には、窓から朝日が差し込んでいた。