電波的マイダーリン!
一瞬、聞き間違いかと思った。
しかし、そうではないのだと、カイトの背中を見ていてわかった。
わかってしまった。
カイトが、元は、普通の、人間……?
それは、一体、どういうこと……?
「“一ノ瀬カイト”は、まぁ、いわゆる孤児だったんですよ。
それを私たちが引き取り、彼と契約を交わしたんです。
“温かな場所を提供する代わりに、電波になってくれ”と。
それで、彼は承諾した。
ま、“電波になってくれ”と言っても、頭に小型の機械を取り付けて脳に繋げているだけですよ。
情報だけをこちらに届けるように設定されています。
外せば普通の人間となんら変わりありません」
あまりにもSFチックだけど、でも、電柱の上から降りてくるようなイリュージョンセットを作る会社だ。
それくらい、簡単に作れてしまうんだろう。
「と、まあ、そんな話はいいとして。
…千早さん。そろそろ、キャラクターを返して下さい。
出張ホストのようなものです。
返していただかなければ、次のお客様に迷惑なんです」
アルファさんが、再度、手を差し出してくる。
きっと、その手を取れば、カイトとはさようなら。
嫌だ。
このままさよならなんて嫌だ…!