電波的マイダーリン!





月は丸い。

欠けている部分なんて一つもない。

満月、だろうか。


カイトはベッドに寄り掛かり、同じように月を見上げながら「そうだね」と、短い返事をしてくれた。


そして、沈黙。


その間にも、時計の秒針は止まることなく時間を刻んでいるわけで。

あたしは、その音を聞くのも、嫌になって来た。


目を閉じて、耳を手で塞ぎ、膝に額を押しつける。


自分の鼓動だけが聞こえた。




ドクン


ドクン


ドクン



一定のリズムを聞いていると、なんとなく、虚しくなってきた。


どんなに思い出を辿っても、あの日に戻れるわけではなかったのに。

あの、出会った時のような、なんでもない感情に、戻れるわけではなかったのに。


どうして気がつかなかったのだろう。


あたしは、もう――…










…――こんなにカイトが好きなのに。









< 357 / 375 >

この作品をシェア

pagetop