電波的マイダーリン!
「んで?なんでそんなに泣いてるのかしら?」
花梨は足と腕を組んでから、そっぽを向いて尋ねてくる。
口外しちゃいけないって知ってる。
カイトのこと、誰にも話しちゃいけないって。
だからあたしは。
「…友達と…喧嘩した…」
俯いて、まごまごと、下手くそな嘘をついた。
でも花梨は。
「…うん」
頷くだけ。
わかってるクセにね?
あたしが泣くほどの友達は、花梨しか居ないって。
「今日…その人ずっと不機嫌で…」
「うん」
「…なんで不機嫌なのかって理由がわかんなくて…」
「うん」
「なんでそんな不機嫌なのって聞いたら…」
「うん」
「…初めて…背中向けられちゃった…」
「…そっか」
花梨は小さく、囁くように相づちを打って、口を閉じた。
しばらく、沈黙が降りた。
聞こえるのは、風の音。
車の走る音。
自転車のベル。
誰かの笑い声。
「……千早は、」
独り言のような小声。
「…一ノ瀬くんが好きなのね」
“わかってたよ”
花梨は、優しい声で、そう言った。