バー恋 ~文字が色を放つ時~
「悪かった……」


 視線を真っ直ぐ戻し、あたしの手を翔吾が包んだ。

 カウンターの下で繋がれたままの手。柔らかく温かい……。

 身体ごと包まれているような錯覚を起こす。離れてしまうのが恐くて、強く握った。

 翔吾との初めての空間は、幼い気持ちが素直に顔を出す。

 何も考えずにずっと……一緒にいたいって。

 心が叫んでいた……。
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