バー恋 ~文字が色を放つ時~
「……またな……」

 ゆっくり立ち上がり、離される手……。

 ドアが開いた。

 一度立ち上がった翔吾は、ポケットに手を入れたまま、あたしの目線まで降りてくる。

(あっ……)




 数秒……ほんの数秒……。重なった唇。

 目を開けたまま見てしまった。翔吾の綺麗な顔、長いまつげを……。

 気づいた時には、翔吾は電車の向こう。
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