バー恋 ~文字が色を放つ時~
『もしもし……』

 求めてやまなかった翔吾の声が、甘く鼓膜をくすぐった。

「もしもし……」

 あたしも恐る恐る声を出した。


『あっ、もしかして…桜?』

 彼はあたしの名前を呼んだ。

「うん…そうだよ……」

 数秒の沈黙……。

『やっと……掛けてきてくれたんだな』

 苦笑の声が聞こえた。
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