真紅の空
「あ!、由紀殿!!どちらへ!?
動いてはなりません!!」
則暁くんの声を背に、あたしは気付くと
走っていた。
見慣れない門をくぐり外へでると、
ふいに右方向へと走る。
どっちかなんて知らない。
それでも勝手に足が動いた。
だんだんとあの不思議な声が大きくなると、
ふもとに村のような集落を見つけた。
*
「おい、何事だ。何故騒ぎを起こしている。
黙らぬか!!暁斉様がいらしておる。静まれ!!」
あ・・・、あの2人・・・。
人の集まっている中心に、すらっと立つ男の姿。
あれは芳さんと・・・暁斉・・・。
暁斉って、偉いの?
芳さんはなんでこんなやつに仕えてるんだろう。
色んなことが頭の中をぐるぐる回ってる。
そんな時、乱闘を起こした張本人であろう人が
前に一歩出た。
「はぁ。実は私、この者の肩にぶつかりまして・・。
謝ろうにも気付いたらこの有様でして・・・」
そういい始めた老人は自分の顔にできている痣を
指さした。
「おい、じいさん。そんな言い掛かりは
よしてもらおうか?俺ァ・・・」
年老いた老人の言い分に噛み付いてきた若い男が
荒々しくそう言うと、途中で口を噤んだ。
あいつが・・。暁斉が男の前に出たからだった。
近付いてみてみると、背筋が一瞬のうちに凍りつく。
あたしを起こしたあいつはどこか18歳の子供らしさが
残っていたのに、
今のあいつには微塵も感じられない。
強く鋭い視線を若者に向けていた。
「どうした?お前の言い分も聞いてやろう。
続けろ」
この声・・・。
やっぱりあの・・・。