真紅の空
その名を呼ぶ声
*
「則暁。随分短い挨拶だったようだな」
「申し訳ございません。止められず・・・」
「ちょっと、則暁くん。謝らないでよ。
あたしが悪いんだから」
「いえ。私の役目ですから。
このお方、名は春日由紀殿。異国の姫かと・・・」
「・・・ゆき?」
長屋に着いて、あたしと暁斉、そして則暁くんの3人で
向かい合っていた。
やっぱり変だよ。
“由紀”って何がおかしいの?
眉を顰めた暁斉の顔を見て、
あたしはむすっとした。
そんな顔したいのはこっちよ。
こんな変なとこ来ちゃって。
ていうか、ありえないことが起こっちゃって・・。
あたしがぼーっとしていると、
腰に誰かの手が触れた。
「な・・・っ!?ちょっと、何急に!!」
手をかけていたのは則暁くんで、
突然のことにびっくりして叫んだ。
則暁くんはあたしが叫ぶと俯いて頬を赤らませた。
ねぇ、則暁くん。
それでもこの手が離れないのはなんで?
あたしがぎゃーぎゃー騒いでいると、
暁斉があたしの口を手で塞いだ。
「煩い。変な気をおこすな。じっとしてろ。
お前には恥じらいというものがないのか」
や。
恥じらいがあるから叫んだんですけど・・・。
むすっとして口を閉じると、
則暁くんが声をあげた。