真紅の空
視線が痛い。
あたしは顔をあげてみんなを見返した。
「・・・何?」
あたしの問いかけに誰かが答えることもなく、
教室は静まり返ったまま。
「アイスドールの春日さん・・・」
誰かの微かな呟きとともに、
あたしはため息をついて廊下に出た。
*
「由紀!」
ゆっくり廊下を歩いていると、後ろから声がした。
あたしを“由紀”と呼ぶのはこの学校に一人しかいない。
この声をあたしはよく知ってる。
あたしの彼氏、結城仁。
「仁。何か用事?」
「や、用事っつぅか、
ちょっと顔見たかったからクラス遊びに行こうと思ってさ」
「そう・・・」
「・・・・・・俺が来た時くらいは笑えよなぁ!!」
「ごめん・・・」
あたしが謝ると、
仁は大きく笑ってあたしの頭を軽く小突いた。
「いいって!お前、笑うとかわいいじゃん。
少しは気抜いて笑えよ」
「・・・・うん」
ごめんね、仁。
仁はいつも心配してくれるよね。
みんなに、あたしが笑わなくて表情のない
冷血人間だからって
“アイスドール”
なんて呼ばれているのを、仁はしっているから、
いつもあたしのいないところで怒ってくれてる。
だけどあたしの前では明るく気遣ってくれてるの、
知ってるよ。
それなのに、そんな仁にも素直になれなくてごめん。
「んじゃ、またなー」
「うん。ばいばい・・・」
仁は優しい。
だけど、その優しさがあたしには苦しい。
それに応えられないあたしに、イライラするの・・・。