真紅の空
そういえばあたし、呼んじゃったかも・・・。
そうは思うけど、いけないこと?
「だってあなた、18でしょ?あたしも18だもの。
別に呼んだっていいじゃない」
「お前の国ならそうかもしれんが、ここでは俺の名を
気安く呼ぶなんて無礼だぞ。
呼ぶなら“様”をつけろ」
「はぁ!?そんな偉そうなこと言う前に、
あんたの正体を教えなさいよ!」
「則暁に聞いてなかったのか!?」
「則暁くんのせいにしないでよ!!」
・・・誰かとこんなふうに言い争ったのは久しぶり。
仁とは、仁が優しすぎてそもそも言い合いになんてならない。
お兄ちゃんと小さい頃喧嘩したくらいかな?
それなのに、こんな訳のわからない男と、
しかも現代人じゃない人とこんなふうにするなんて・・・。
暁斉“様”が息を深くはいて落ち着いたように姿勢を正した。
「信長公を知っているか?」
「え?」
「俺は織田信長公に仕える武士だ。ここら一帯を任されている。
大名である父が亡くなってからは、俺がまとめている」
「でも・・・、則暁くんは“次期当主”って・・・」
「則暁、そこは話したのか。まぁいい。
こんな子供が当主なんて納得のいかない奴らが大勢いる。
だから、表向きには“次期当主”としてある」
暁斉は淡々とそう言った。