真紅の空
織田信長の家臣・・・。
結城、暁斉・・・。
そんな人、知らない。
聞いた事ないよ。
史実上、どこにもその名は載っていない。
初めて聞いた名前のこいつが、
あの有名な織田信長の家臣・・・?
「わかったらお前も正しく呼べ」
「・・・あたし、“お前”じゃないわ。暁斉“様”!!」
皮肉たっぷりにそう言うと、暁斉はじっとあたしを見つめた。
「お前・・・威勢の良すぎる女は好かれないぞ?」
「ほらまた!お前じゃないって言ってるじゃない!!
別に好かれなくても結構!!」
噛み付くようにあたしがそう吐き捨てる。
暁斉はにいっと口角をあげてあたしを見つめた。
「由紀」
「あ・・・・」
―ゆき・・・。ゆき・・・っ―
ああ、この声だ。
低く綺麗で、優しい声。
この声が、あたしを呼んでいた。
この人が、あたしを呼んでいたの・・・。