真紅の空


リビングを見てあたしは少しほっとした。


昨日、とでも言えばいいのか、
あたしが暁斉のいる時代で目が覚めた時。


あまり驚かなかったけど、少し不安だった。


いつもの景色が見えなかったから。


バカみたいに溺愛するお父さんも、
かっこよくて大人なお兄ちゃんの姿もなかったから。


だけど、今はそこにあった。


「おー。由紀。おはよう。気分はどうだ?
 昨日は大変だったからなぁ」


え?


昨日?


だって昨日はあたし、暁斉のところに・・・。


「昨日?」


「・・・覚えてないのか?お前、倒れたじゃないか。
 お父さん心配したぞー。仁くんが連れてきてくれたじゃないか」





どうなってるの?


あたしが考え込むように唇を噛み締めると、
今度はお兄ちゃんが声を上げた。


「由紀・・・あいつは?」


あいつ?


ああ、暁斉ね。


「冬真?・・・・って、由紀!!
 後ろの男は誰だ!?」


お父さんが暁斉の姿を見つけて驚いた。


暁斉も、お父さんを見て眉を顰める。


「おい、あの男は?」


暁斉は小声であたしに問いかけた。


「あたしのお父さんよ」


「そうか、あれが父上か」


暁斉は納得したように頷くと、
体勢を戻してお父さんに深く頭を下げた。


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