真紅の空
*
「何の呼び出しですか?」
放課後の職員室で、
あたしは目の前の先生を見つめた。
先生は呆れたようにため息をついて口を開いた。
「毎回呼び出されたら何かわかるだろう」
「・・・レポートの件ですか?」
「ああ、そうだ」
「毎回答えてるのでわかりますよね?
もう提出済みのはずです」
あたしが淡々と言うと、先生は一枚の紙を取り出した。
「これでは認められない!これも毎回言ってるだろう!?」
「・・・本当のことを書いただけです」
「お前なぁっ・・・全教科満点のお前が、どうしてこの
課題だけ“わかりません”の一言なんだ!?」
日本史のレポート提出。
好きな時代を選んでその歴史をまとめるという
卒業課題。
あたしの出したレポート
“わかりません”
の一言だけが認められないことなんてわかってる。
だけど・・・。
だけどその一言があたしの本音なんだよ。
先生にはわかんないんだ。
じっと先生を見据えると、
先生も困ったように顔を歪めた。
「とにかく、再提出だ。
この際適当でいいからちゃんと・・・―」
適当・・?
先生、本気で言ってんの?
あたしは勢い良く立ち上がると、
先生の手にしていたレポートを取り上げた。
「春日・・・?」
「わかりました。再提出すればいいんでしょ!?」
「ど、どうした急に・・・」
「失礼しました・・・っ!!」