真紅の空





「何の呼び出しですか?」


放課後の職員室で、
あたしは目の前の先生を見つめた。


先生は呆れたようにため息をついて口を開いた。


「毎回呼び出されたら何かわかるだろう」


「・・・レポートの件ですか?」


「ああ、そうだ」


「毎回答えてるのでわかりますよね?
 もう提出済みのはずです」


あたしが淡々と言うと、先生は一枚の紙を取り出した。


「これでは認められない!これも毎回言ってるだろう!?」


「・・・本当のことを書いただけです」


「お前なぁっ・・・全教科満点のお前が、どうしてこの
 課題だけ“わかりません”の一言なんだ!?」



日本史のレポート提出。


好きな時代を選んでその歴史をまとめるという
卒業課題。


あたしの出したレポート


“わかりません”


の一言だけが認められないことなんてわかってる。


だけど・・・。


だけどその一言があたしの本音なんだよ。


先生にはわかんないんだ。


じっと先生を見据えると、
先生も困ったように顔を歪めた。


「とにかく、再提出だ。
 この際適当でいいからちゃんと・・・―」


適当・・?


先生、本気で言ってんの?


あたしは勢い良く立ち上がると、
先生の手にしていたレポートを取り上げた。


「春日・・・?」


「わかりました。再提出すればいいんでしょ!?」


「ど、どうした急に・・・」


「失礼しました・・・っ!!」


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