真紅の空
*
イライラしながら教室へ戻ると、そこは静かだった。
誰もいないと思って中に入る。
一歩踏み出して初めて気付いた。
「仁・・・っ!?」
あたしの席に座っていた仁は手を振った。
「また呼び出しかぁ?」
「・・・レポート出せって」
「ああ、日本史?あれ、面倒だったなぁ」
「仁は終わったの?」
「おう。ちゃちゃっとな」
「そう。何時代について?」
「江戸!!っつか、幕末!
高杉晋作とか、坂本龍馬とかな。
かっこいいだろ!?」
「うん・・・。仁らしいね」
江戸がそんなに好きなのか、
仁は目を輝かせるように話し出した。
あたしはそんな仁に短く相槌をうつと、
仁は大きく笑った。
「由紀は?もう決めてんのか?」
まだ、決まってない・・・。
もう、いっそのこと
仁と同じ江戸にしちゃおうかな。
「あたしも江・・・―」
そう思って口を開いたときだった。
―ゆき・・・・。ゆき・・・・っ!!―
「戦国・・・時代」
どこからか、声が聞こえたの。