真紅の空



その人は悲しそうにそう呟いた。


伏せられた目元が綺麗で、
女のあたしでもついつい見惚れてしまうほど。



「雪姫様。どうかお戻りください」



則暁くんが頭を下げてそう一言告げた。


雪・・。


やっぱりこの人があの夢に出てきたお姫様・・・。



「どうして・・・どうして私はダメなのですか?
 私が父上の娘だから、ですか??」


「勘十郎殿は信長公の同母弟。
 暁斉様を想うなら、今日は戻られたほうがよろしいかと」


「その女がここの敷居を跨ぐことはできても、
 私はいけないということですか?」


「暁斉様は今、信長公のもとまで出られました。
 このようなところを見られては暁斉様の
 お命が奪われかねません」



何?何なの?


何の話?



一人、訳のわからないまま2人の会話を聞く。


織田信長の同母弟って確か・・・。


(織田・・・信行)


その、信行の娘がこの雪姫様?


でも、どうして暁斉の命がどうとかっていう
そんな話になるのよ。





「あ・・・・」







“信長公に仕える武士だ”









あの言葉を思い出した。



織田信長の家臣、結城暁斉。


そして、織田信行の娘、雪姫・・・。



そういうことなんだ。


だから、だから・・・。




< 54 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop