真紅の空
“殺してやりたいほどにね”
則暁くん・・。
なんて顔をするの・・・?
覇気のない瞳の奥には、
どす黒くて、とても強い憎悪の光。
雪姫と則暁くんの間にはなにかあるの??
「の、則暁くん・・・?」
「中へ、戻りましょう。
折角の綺麗なお着物が汚れてしまいます」
「え・・・あ、うん・・・」
あたしを捉えた則暁くんの目には
もうあの嫌な色は見られなかった。
ふわっと、優しそうな瞳。
誰かの下で、支えているよって、
そんな温かい瞳。
あたしは咄嗟に返事をして頷いた。
則暁くんが静かに微笑んであたしを
中へと促した。
そっと触れられる背中が軽くて、
自然と足が動いてしまう。
中へと入るとあたしは足の力が抜けて
その場に座り込んでしまった。
「大丈夫ですか?」
「うん・・・。ちょっと疲れたのかも」
「では、貴女にこれを差し上げましょう」
「え?」
則暁くんはそう言ってあたしの手に
何かを握らせた。
「これは・・・?」
それは小さな包みのようなもの。
これが何なのかわからなくて、
あたしは首をかしげた。
「それはそこの木の傍にある金木犀を
磨り潰したものです」
「金木犀・・・」
「はい。私はとても好きなので、
よくこれを床についたときに
置いていたりするのです」
あたしはその包みにそっと鼻を近づけた。
「あ・・・」